2000年11月27日(月)

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 朝8時過ぎ自宅を出る。
 朝食は町の屋台でクイティ~オ+アイスコーヒー。
 Mr.プリン氏はミルクセーキのみ(確か2ドル出してお釣りが
 きたな)
 9時過ぎ、正夢氏が以前住んでいたビルへ向かう。
 そのビルの2Fに入っているドイツの通信社で働くソペン氏に
 会うため。
 ソペン氏は、う~ん、カンボジアのこといろいろ話をしてくれた
 けど、どうも自分のプロジェクトにあうような話題はなかった。
 もう一つピンとこなかったなあ。
 残念。
 国会前の芝生大通りをクルージング。
 10カットほど風景撮影。左手に新築中の日本大使館を
 横目に、ドンと構えるタイ大使館を通り過ぎ、ロイターの
 オフィスへ。
 マドラは、先週起こった銃撃戦関連の取材のため裁判所と
 警察へ行って不在。
 オフィスで働くエディターと立ち話。マドラは午後には戻る、
 とか。
 しゃあないなあ。
 キャピタルへ行き、ウエブチェックをし、昼帰宅。
 2時過ぎ、午後の活動開始。
 プノンペンポストに行くが、キャサリーンは不在。ロイターに
 行くがマドラは帰っていない。
 なんか今日は不発が多いな。
 さて、このままごみ捨て場に行くか?
 あ、この間ちょっとだけ立ち寄ったオリンピックマーケットが
 面白かった。
 時間は4時前だったけど、とりあえず、そのマーケットに
 向かう。
 マーケットの建物は3階建てで、1辺が100m近くある
 いびつな正方形をしている。
 しっかし、でかい建物だ。
 でも、その中はちょいと暗く、あんまり撮影向きではない。
 やっぱり、建物の周辺で店を出したり、客待ちをしている
 人たちがお目当てとなる。
 でも、屋台でそばを頬張ったり、カードギャンブルに熱くなって
 いる人たちを写していても、もう一つしっくりこない。
 なんか気がすっきりしないままてくてく歩く。
 あれ、道に迷ったぞ。
 さあ、どうやって帰ろう。
 正方形の3辺目を歩いていたとき、やっと出くわした、
 その被写体に・・・。 彼の横顔の輪郭は、沈みゆく太陽の光を
 浴びて光っている。
 片手でお金を入れてもらうための帽子をしっかりと握っている。
 そして、微動だにせずに座っている。
 市場から出てきた人が時折、彼の持つ帽子にお金を入れて
 いく。
 彼の背後には片足をなくした酔っぱらいが、杖を投げ出し、
 死んだように寝転がっている。
 半逆光の、絵になる風景だった。
 ファインダー越しに彼の姿をとらえてみた。
 左右に駐車している車はじゃまになったけれど、確かに絵に
 なった。
 20mmレンズを使い、自分の一番気にいるアングルを決め、
 3~4カット撮影。
 その後は、24mmと200mmレンズを使ってこれでもか、
 これでもか、とシャッターを切っていく。
 すぐそばに座っていた露天商のおばちゃんにカメラバッグを
 預け、その男に突っ込んでいた。縦、横、斜めとアングルを
 変え、撮していく。
 左目は完全につぶれている。
 右目は開いているが、眼球がおかしい。ひいてはだめだ。
 周りにいた人たちは何事かと、取り巻き始めた。
 日差しの強い太陽だ。
 体が熱くなる。
 10分もすると、じわじわと汗をかき始めた。
 焼けるようだ。
 バシッ、バシッ、こういう時のF3Pのシャッター音は
 心地よい。
 3本近くフィルムを使って、ようやく、一息。カンボジアに
 来て初め感じた撮影感。
 時間にして40分間ほど。
 決して彼を撮しても、このカンボジアの問題を撮したこと
 にはならないだろう。
 シャッターを切っているときの自分は、創作だけに力の
 はいった一写真家だった。
 そこには、何をどう切り取りとって問題提示ができるか、
 という意識はなかった。
 恥ずかしい話だ。
 もし、自分のイメージ通り仕上がったとしたら、今回の
 カンボジアでの1枚には入る出来だ。
 さ、気分を沈めて、今日のごみ捨て場行きだ。
 この1週間夕立もなく、幹線からごみ捨て場に通じる小道も
 すっかり乾いた。
 ごみの現場までバイクで行けるようになった。
 あ、バラック先生だ。
 ごみ捨て場のすぐ横の学校で教えている。
 やっと会えた。
 握手を交わし、話をする。
 25歳の彼は、20kmも離れたところから毎日通ってきている
 とか。
 午後~夕方の授業を担当。
 日が沈むまであまり時間がない。
 靴を長靴に履き替え、さっそく今日の撮影開始だ。
 毎日、毎日同じようなイメージを撮影してうんざり気味だったが、
 それでもやはり撮しておかねばという気がしてきた。
 具体的にどういう風に発表しようかと考えながらの撮影だが、
 だんだんとぼんやりしながらも考えがまとまり始めた。
 ぼんやりとしているが・・・。
 6時前、暗くなりはじめた。撮影終了。 ごみ捨て場からの

 帰り道、東の空がピンクとオレンジ色に染まった。
 淡い淡い色だ。
 Mr.プリンの運転するバイクの後ろにまたがり、空をぽかんと
 眺める。
 道路はもうもうと白い砂煙が舞い上がる。
 行き交う車やバイクのヘッドライトが幻想的に浮かび上がる。
 一日の疲れかがバイクの揺れ重なり心地よい。
 夕日を見てこういう風にじ~んときたのはこの4月、タイ・
 ビルマ国境で燃えるような夕日を見て以来だな。
 でも、今日は、パステル画のようなしんみりとさせる空の色。
 人間の心や感情がどのように揺れ動こうが、自然の生み出す
 パノラマはいつもいつの日にも展開している。
 ああ、人間のちっぽけな姿と存在よ。
 このように自然の作りだす風景を感動できる限り、まだまだ
 私は前に進める。
 ほんの一時期の感情の揺れは、そっと箱にしまっておこう。
 バイクが市内に近づくにつれ、建物の陰に空が隠れてしま
 った。
 しかし、あの空は私の記憶に残っている。
 11月27日の空だった。
 

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